リノベで人気の無垢の良さを、何とかお伝えしたいのです。
写真・Aleksandar Radovanovic
「無垢っていいよね。すべすべして気持ちいいし、匂いもいいし。」
100人いたら、10000人が感じる無垢の床の良さです。
でも、ただ「いいよね!」ってだけでは、だめなんです。
なんてったって、無垢材は高いんです。
いいのはわかってるけど、コストで敬遠されてしまうかもしれない無垢材。ですが、高いには高いなりの理由がありまして、その良さをしっかりわかっていただいた上で、材料を選んでほしいのです。コストがかかるぶんリターンもあるというのが無垢材だということを、声を大にして言いたいのです。
まずは、
「無垢、無垢言ってますけど、無垢ってなんなんだ?!」
っていうところから。
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無垢材って、なんなんだ
無垢材とは、辞書の上だと
合板や集成材ではなく、使用する形状で丸太から切り出した木材。(ことバンク)
という意味らしいです。
要するに純粋なんです。混じりっ気0。
成分表示が、「木 100%」なんです。
体に悪い物質も入る余地がありません。
保存料・着色料なしの食べものと一緒です。
森林に行くと、空気が美味しいですよね。木が息吸って吐いてるから美味しいんです。マンガとかで、天才的な料理人が魚を捌くと、捌かれた魚が骨だけで水槽にもどって泳ぐじゃないですか。それと一緒で、木も切られたあとも呼吸をし続けるんです。
無垢材を床や壁に敷き詰めたら、そこはもはや家ではなく、森です。
こんなに純粋さを強調するってことは、”無垢じゃない材”も存在するということです。この”無垢じゃない材”のことを「新建材」と呼んだりします。新しく開発された建築材料で、新建材です。
新建材は、防音や、断熱といった暮らしの快適さを実現する材料として、たくさんのところで使われています。アパートで隣の部屋のテレビの音が、(そこまで)聞こえないのは、防音材のおかげなのです。新建材って技術の賜物なのです。
そして、その一つが、「複合フローリング」です。多くの人がフローリングと呼んでいるのがこれになります。これは、合板の上に0.5mm〜3mm程度の薄い柄の印刷されたシートや板を接着したものです。
表面に薄い無垢板を接着した複合フローリングは、一見すると無垢100%の単層(一枚板)フローリングと違いがないように見えます。建売住宅や賃貸物件では、用途や好みに合わせた種類の多さ、コストの低さ、取り扱いのしやすさから、複合フローリングが選ばれています。
真面目な解説をしたところですが、大丈夫ですか、ついてきてますか?
というわけで、無垢材について知っていただくために、家の中でも(たぶん)一番触れるであろう『床』に絞って、無垢材と複合フローリングを比較しながら解説していきます。
「無垢材は、純粋な木100%っていうのはわかったよ。で、新建材っていう新しい材料があるってのもわかった。それじゃ」と思ってる、そこのあなた。ブラウザバックしてYoutube開かないでもうちょっとお付き合いください。
左が、無垢の一枚板。右が複合フローリングです。違いが一目瞭然ですね。
無垢の床と複合フローリング
さあ、はじまりました「無垢材 vs 複合フローリング」の3本勝負スペシャルマッチです。ここでは、「無垢の床=100%無垢の単層フローリング」、「複合フローリング=表面だけ無垢の複合フローリング」としていきます(ここ大事)。
一本目は、「お値段」
比較のために、両者とも同じくナラの木で勝負です。
結果は、、、
複合フローリング、お安い。約2倍の価格差です。やはり、表面だけ無垢のフローリングには、純粋無垢な無垢の床は完敗です。無垢の床は生きているので、自然に曲がったりしていきます。だから、無垢に精通した職人が張らないとクオリティが安定しません。その点、複合フローリングは、誰が作業してもクオリティに変化はないので、世の中のシェアを獲得しています。「床板がずれた!」みたいなクレームも起こらないので、業者側も安心して使用できます。もちろん技術のある職人さんであれば、その点は大丈夫です。
つづいて、二本目は、「耐久性」
複合フローリングは、文字どおり複数の板・材料を接着剤でくっつけているため、接合面や下の材料が劣化していきます。経年変化を楽しむ無垢の床に比べて、劣化の度合いをいかに抑えるかが勝負になります。近年、天然木の質感をいかした仕上げを行う複合フローリングも登場していて、そうした製品を選んだ場合、表面部分の劣化はあまり気にならないかもしれません。
技術の進歩を期待しつつ、ここは引き分けとさせていただきます。
さて、三本目は、「室内環境」
もはや、無垢の床に勝ち点を与えるために作ったかのようなテーマです。審判の下心が丸見えです。そんな中、複合フローリングはどこまで戦えるのでしょうか。それでは比較してみましょう。
一時期、新建材を用いた家でのシックハウス症候群が話題になりました。これは、建材に用いられている接着剤や表面の塗装の成分によって起きたりしていました。現在は、かなり改善されているようですが、健康面だけ見ると無垢の床に軍配があがります。
そして、やっぱり部屋の空気感です。圧倒的な吸湿性と、夏は涼しく、冬はあたたかい、通年変化の少ない足触り。さらにドアを開けた瞬間のフィンランドの湖畔に立ったかのような香り。フィンランドの湖畔の香りは、僕もよくわかりませんが、それくらい木の香りは素晴らしい、と思うわけです。
ただ、無垢の床の圧勝というわけにはいかず、床暖房や防音材の導入を検討すると、無垢の床では得られない室内環境の得点も期待できます。ここは、無垢の床の辛勝ということで。
お伝えしたいこと
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
無垢の床と複合フローリングの終わりなき戦いを、生暖かい目で見守ってくださったあなたにお伝えしたいのは、無垢の床が、複合フローリングより優れている、ということではありません。床板一つとっても、それぞれの特徴をしっかり見極めて、手前のコスト感だけではなく、長期的な視座に立って選択をしていっていただきたい、ということです。
今回は、床に用いる建材として、無垢材と複合フローリングを比較しました。リビングで使用するイメージで解説をしてきましたが、例えば水回り(キッチンや脱衣所)での適正は、水への耐性の強い製品もあるため、圧倒的に複合フローリングが高かったりします。一概に、どちらを用いるべき!というわけではなく、使用目的とライフスタイルの優先順位にあわせた建材選びを行なっていただければ、と思います。
文・木村