WALL -それはそれは素敵な壁でした。(うちっぱなし編)
壁。
それは屋根を、そして、家を支える。夏は、熱風を受け流し、冬は冷気を通さない。レンガの壁はオオカミを退け、巨大な壁は進撃する巨人の行く手を阻む。
壁。
それは部屋の四方に広がり、光を、音を反射する。古の教えによれば、壁に耳があることもあったといいます。
これは、「それはそれは素敵な壁」のお話である。
目次-contents-
うちっぱなしが素敵です。
時代の変化に伴って、壁は、その姿形を変えてきました。土壁、木材、コンクリート、珪藻土。住む人の願う生活を叶えるため、進化を続けてきたのです。
時は2017年。新築至上主義のこの国に、新たな文化が根付こうとしています。
リノベーションです。
現存する住まいを思うがままに変えていくこの文化は、京都の町家や日本中に現存する古い家屋のように、住む人によってその都度その都度直し、住み繋いでいくものとなっていくでしょう。そんなリノベーションにおいて、部屋を囲む『壁』をどうするかは、重要な要点(頭痛が痛いみたいだね)なのです。
そんな折、よく耳にするのが「おしゃれなカフェみたいな家がいい」という声です。
おしゃれなカフェ…。
細かいことを言えば、それが何を意味するのかは人によって異なるでしょう。しかし、その上で、「おしゃれなカフェ」というワードに込められた「おしゃれではないカフェ」との差について考えると、思い当たる節があります。
それが、『壁の違い』です。(※あくまで個人の意見です)
おしゃれなカフェには、必ずと言っていいほど、こんな壁があります。
この、10000回洗ったデニムのような風合いのやつです。コンクリートうちっぱなしや、モルタル仕上げのこうした壁は、ぐっとくる人も多いのではないでしょうか。
wikipedia先生によると、モルタルとは、
ということらしいのです。
そもそも、モルタルとコンクリートの違いは、ご存知でしょうか。
モルタル=セメント+砂
コンクリート=セメント+砂利 (僕調べ)
です。コンクリートは、壊れちゃいけないもの、例えば駐車場の舗装とかフェンスの土台などに用いられます。
無機質で冷たいイメージのうちっぱなしが、なぜ人気になっているのでしょう。私は2つの理由があるように思います。
①ギャップ萌え
文字通り、ギャップ萌え。
どんなギャップかを説明するために、この写真を見ていただきましょう。
そう。この、節のはっきりとした、やさしくあたたかな無垢床と、仕上げによる淡い風合いの変化が感じられる無機質なうちっぱなしの壁とのギャップです。普段おっとりとしていてなで肩のやさしい草食系男子が、仕事モードになるとクールで表情一つ変えずに黙々と突き進む一面がある、みたいな感じ。しかし、この壁は、ただクールなだけでははありません。上からの光を適度に吸収し、適度に反射させています。彼(この壁)を通した光が、部屋全体にやさしく広がるのです。
部屋を区切る壁としても、このギャップ萌えな彼(壁)は優秀です。板目のはっきりしたカントリー調ではありますが、先ほどと同じく無垢板の床を仕切る、存在感いっぱいのうちっぱなし。家具・雑貨をかわいらしい色や柄のもので統一する場合、壁や天井までその雰囲気に揃えてしまうと、どうしてもやりすぎな感じが出てしまうケースもあります。そこで、無口なのに味のある表情(風合い)の彼(壁)の出番です。ふわっとした室内を、引き締めすぎない程度に引き締める。うちっぱなしのもつギャップ。それが、素敵な空間を作り出すのです。
②そもそもかっこいい
派手なほど良いとされていたバブリーな時代がかつてあり、その後閉塞感漂う時代を過ごしているなかで、機能美に代表される、シンプルで洗練されているものの価値が人々の間に広がってきています。無駄を削ぎ落とすことと、デザイン性の両立、それがうちっぱなしが人気なわけではないでしょうか。(なんか、それっぽいこと言ってる)
例えば、こんな部屋。
壁一面がうちっぱなし。キッチンや天井の配管の丸見えな雰囲気と同じく、無機質で削ぎ落とされていいます。この部屋に住んだら、絶対”クリエイチブ”な趣味ができるようになるはず。基本、エアコンの温度設定は低めでしょう。しかし、無機質になりすぎては住みやすさが損なわれます。長年踏み込んだような濃い無垢板が、やわらかさをプラスして、全体として調和しています。要は、かっこいい。
「モルタル×水回り=かっこええ」は、何かの教科書に乗っていい公式だと思います。水回りによく用いられる白い陶器とのバランスが絶妙なのです。モルタルは、着色しやすいという特徴もあり、グレー強めのこんな色合いも表現できます。
ちなみに、よく天井がうちっぱなしの写真を見ることもあると思います。例えば、こんな仕上げ。
触ったら、いかにもザラザラしそうな感じの天井。テラス側の大きな開口部からいっぱいに取り込んだ光を部屋に流し込む。”明るすぎない”ムーディーな部屋を作る際には、天井をモルタル仕上げにすることも検討してみてはいかがでしょうか。
つづく
素敵な壁は、日本、いや世界中に日々生まれている。これからも、WALL~それはそれは素敵な壁でした。~では、リノベーションに取り入れたい壁のデザインをご紹介していきたいと思っています。(生まれは消えていくリノベーションマガジンの連載ですが、本記事もちゃんと連載を目指してがんばります。)
(文・キムラ)