一番はじめに玄関のことを考えて欲しいリノベーションの話
いくつかのマンションリノベーションに携わり、お客さまへお部屋を引き渡したあとで、一番満足度が高かった箇所のひとつに「玄関」へのこだわりがあげられます。マンション新築時に設計される玄関や廊下は、どうしても狭く暗い場所としての役回りを強いられていると感じます。それにはいくつかの理由が。私が経験した事例も踏まえて、少し考えてみたいと思います。
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売り手側の都合 ~図面映え~
新築マンションを販売する側からの考え方として「なるべく部屋の表示面積は大きく!」が大原則としてあります。それも何故かこだわるのは「6帖以上の部屋」。確かにお部屋の間取り図面を眺めたとき、「5.5帖の洋室」と「6帖以上の洋室」と書かれたお部屋とを聞き比べると、印象として大きな差がありますよね。なんだか6帖無い部屋はとても狭く感じてしまいます。昔でいう四畳半なイメージ。。これを何とか払しょくするためにもなるべく玄関廊下の面積は最低限に抑え、少しでも部屋の表示面積を大きくすることに注視しがちになります。いわゆる図面映えする間取りになってしまうのです。結果、ベビーカーを置いてしまうだけで大人はカニ歩きをしないと通れない玄関となってしまうことが多いのです。
窓が部屋に無いとダメな理由 ~部屋数へのこだわり~
同様に明るい玄関が作られづらい理由もあります。マンションの窓、主に共用廊下側の窓は、ほぼ100%に近い確率で部屋に面しています。玄関を明るく通気を良くするための窓は、あまり見かけることはありません。これにも理由があります。住宅の販売広告等では「居室」と表示するには、建築基準法の採光の規定(建築基準法第28条)を満たしていなければなりません。簡単に解説すると原則として窓に面していない部屋は「居室」と表示できないため、「納戸」と記載しなくてはならなくなります。3LDKと表示したくても、窓が無い部屋が1つある場合は2LDK+納戸または2SLDK(S=サービスルーム)となります。そのため販売側の理屈としては、玄関や廊下、収納スペースに窓も設えるよりは、極力部屋に面するように設計して、部屋数の多いお部屋に見せたい気持ちが働きます。ここでも玄関に対する配慮は後回しにされてきたように思います。
リノベーションによって虐げられてきた?玄関や廊下をよみがえらせることができた事例をご紹介してみたいと思います。
玄関を広げた事例1
出産を控えたご夫婦の玄関リノベーション事例です。前述の通りベビーカーを置いても余裕のある玄関がご希望でした。リノベ前は狭く薄暗い玄関でしたが、入って左側のお部屋を少し小さくすることによって、ゆったりとしたスペースの玄関に生まれ変わりました。開けづらかった玄関脇の小さな下駄箱も取り払い、普段使いの靴のみを置ける棚を新設して、シューズクロークを別室に設けました。オーナーのK様は季節ごとに靴の整理や所有している靴の把握ができるようになったと仰っていました。壁には木目を活かしたパネリングでアクセントをつけ、引き締まった印象を演出しています。
⇒事例詳細ページ中古購入だから出来る理想空間づくり「Beach Style リノベーション」
玄関を広げた事例2
家に帰ってきて玄関扉を開けた印象を、とても大事に考えたリノベーションです。大げさに玄関の幅を広げるのではなく、自然な明るさを取り入れるために、ガラスブロックを埋め込める分だけの広がりを作りました。またリビングドアによる閉塞的な空間にならないようドアは付けずに、木目の格子でプライバシーを保ちつつ解放感のある玄関廊下になりました。お客さんもオーナー自身も、家の中へ優しく迎えてくれるような玄関です。
⇒事例詳細ページ大人のナチュラルライフ。
土間収納の例1
お住まい探しの当初は一戸建てを希望されていたオーナー様。その理由は、マンションでは趣味のアウトドアギアを収納できるスペースが無いから。そして予算との戦いも。多少汚れてしまったものもタフに収納したい、自慢のアイテムをショップのようにしまっておきたい。そんな思いと予算の都合を、中古マンション+リノベーションで、玄関から繋がる土間スペースを作ることによって解決しました。共用廊下側の窓もあるスペースなので、雨模様で使用し湿気を含んだテントやシュラフの乾燥にも一役かっています。
⇒事例詳細ページ趣味を存分に楽しめる空間作り『Beach Style リノベーション』
土間収納の例2
土間収納と呼ぶにはちょっと広すぎる?事例です。玄関横のほぼ一部屋分を土間スペースにして、住まう方の可能性が大きく広がるエリアとして好評でした。ロードバイクが趣味の方にはセキュリティとメンテナンスのストレスを一気に解決。お仕事やDIYでお気に入りの工具を収納したい方にも重宝されるスペースです。排水には気をつけなければなりませんが、緑であふれる室内菜園を楽しむこともできるかもしれません。生活がアクティブになるような発想を与えてくれそうなリノベーションですね。
⇒事例詳細ページ土間の良さは、住むとわかる。
土間玄関の例
家に入るまでもないけど少し世間話ができるような「縁側」や「上がり框(あがりかまち)」をイメージしてつくった土間スペース。三和土(たたき)と呼んだ方がしっくりきそうな仕上がりです。画像では分かりづらいのですが、玄関を入ってまっすぐに土間が広がり、居住スペースとは障子で仕切ってお互いの空間の明るさを分け合う演出にも、日本人の細やかで実用的な「先人の知恵」が支えてくれる住まいになりました。
⇒事例詳細ページリノべに「和」の選択肢を。
一番に考えたい玄関のこと
マンションをリノベーションするにあたって、まずはリビングでの過ごし方やキッチンの利便性の優先順位を上げがちですが、ほとんどの中古マンションが玄関に気を使っていない現実から、もっともリノベーションの満足度、効果(やった感)を上げやすいのが玄関かもしれません。狭さ暗さを解決して、ストレスなく「行ってきます!」と「ただいま!」のテンションが上がっちゃうような、ワクワクする港を、リノベーションで叶えていただきたいと思っています。
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