ビヨンセが夜10時までに必ず寝る理由「本当の成功とは平和と幸福と健康を手にしていること。でも、どれも睡眠なしには手に入らないわ」

[記事更新日]2017/04/03

beyonce

テロ、自然災害、そして金融危機など、21世紀に生きる私たちは多くの危機に直面していますが、本当の危機とは睡眠時間を削って働くことを美徳とする20世紀的な古い発想がまだまだ社会に蔓延していることなのかもしれません。

実際、厚生労働省が行った調査によると現代人の5人に1人が睡眠に関する悩みや障害を抱えているそうで、日本大学医学部の内山真教授は、睡眠不足による事故や作業効率の低下などによる経済的損失を年間約3兆5000億円と算出しており、ここに医療費を含めると年間5兆円以上が睡眠不足によって失われているというのです。(1)

現代社会では長時間の睡眠は時間を無駄にしていると考える傾向があり、睡眠時間が短いことが美徳とされますが、人生を豊かにするためには睡眠は欠かせない要素だと訴える著名人が近年増えるようになり、ハフィントンポストの創業者であるアリアナ・ハフィントンさんはビジネス界や政界のリーダーたちがメチャクチャな意思決定
を行い、破綻しかけているのは睡眠不足が全ての原因だと断言しています。

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↑睡眠不足の状態で意思決定を行うのは、酒に酔って車を運転するのと変わらない

また、ライブドア元社長のホリエモン、世界一の投資家であるウォーレン・バフェット、そしてアマゾンのCEOなど名だたるビジネスリーダーたちも口を揃えて睡眠はより良い選択をするために何よりも大切なものだと語っていることから分かるように、今では一流の人ほどよく眠っており、「会社のデスクで夜を明かした」と睡眠不足を武勇伝のように語るという風習はもはや過去の遺物と言っても過言ではありません。

さらに、世の中の「流行」を決めるファッション業界で多くのインフルエンサーたちが睡眠ファンになっており、スーパーモデルのカーリー・クロスは「みんな美容液にお金をかけるけど、夜ぐっすりと眠ることが全ての違いを生む」と述べていますし、世界的シンガーソングライターのビヨンセも夜10時には必ず就寝するよう心がけているそうで「本当の成功とは平和と幸福と健康を手にしていること。でも、どれも睡眠なしには手に入らない」と強く語っています。

カーリーやビヨンセには熱狂的なファンが大勢いて、多くのファンにとって彼女らが愛用している高級化粧品やエステサービスを真似することは金銭的に難しい一方、睡眠を大切にするという彼女らの姿勢は容易に真似できるものの一つであるため、今後、良い睡眠が世の中の新しい流行になることは間違いないでしょう。(2)

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↑ビヨンセ「本当の成功とは平和と幸福と健康を手にしていること。でも、どれも睡眠なしには手に入らないわ」

睡眠は何世紀もの間、何も生み出さない無益なものとして扱われてきましたが、近年の研究によると睡眠には日中に溜まった脳内の有害タンパク質を除去する効果があると分かってきており、言わば睡眠を取るということは、 脳内に清掃員を送り出している状態にあると言えます。アメリカの名門医科大学であるロチェスター大学のマイケン・ネーデルガード氏によると、その脳の清掃作業は睡眠中に“のみ”行われるため、睡眠をおろそかにすることは家の掃除をサボるのと変わらないとして次のように語りました。(3)

「脳は使えるエネルギーに限りがあるため、目覚めて情報を処理するか、眠って掃除をするか、二つの状態のどちらかしか選べないのです。自宅でパーティーを開くようなものだと考えれば分かりやすいでしょう。ゲストをもてなすことも、家を掃除することもできますが、両方同時にはできないですよね。」

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↑家や衣類には清潔感を求めるにも関わらず、頭の中の掃除には無頓着な現代人

ほんの数日でもキッチンの掃除を怠ればそこから悪臭が漂い、一ヶ月も放置すればその家はあっという間に住めない状態になってしまうように、睡眠不足が長期間にわたると前述の有害タンパク質が脳細胞を傷付け、脳と体の健康と機能に大きな影響を与えるようです。

ペンシルベニア大学と北京大学の共同研究によると、睡眠不足のマウスは注意力や認知機能が約25パーセントも減少していたといい、人を対象とした研究では睡眠不足によって損傷を受けた脳の認知機能は、十分な睡眠を3日とっても正常に戻らない可能性があることも分かってきています。

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↑脳をボロボロにしてまで夜更かしする価値はあるのだろうか

イギリス・ラフバラー大学の睡眠学者、ジム・ホーン氏は実際に睡眠不足の人たちの注意力や認知機能がどの程度落ちるのかを確かめるために、参加者をカジノ付きの実験室に招き、カードを使って実際に参加者にギャンブルをしてもらいました。

50枚で1組のカードの束が4組あって、その4組のカードの束は、お金がもらえるカード(アタリ)とお金を取られるカード(ハズレ)で構成されており、参加者たちはその4組のカードの束から順番に一枚ずつカードを抜き取るように伝えられます。

ただ、その4組のうち1組のカードの束は他よりも多くの当たりカードが入っており、参加者たちはそれを知らされていません。十分に睡眠をとった参加者はアタリが多く入っている束を選ぶコツを無意識のうちに会得し、一方で、睡眠不足の参加者たちはいつまでも無作為にカードを引き続けたと言うのですから、この実験結果を見ればカジノが客たちを夜更けまで足止めし、睡眠不足の状態でゲームをさせたがる理由がよく分かります。(4)

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↑客に寝不足状態でギャンブルしてもらうために、カジノは夜中にショーもドリンクも無料で提供する

1日5時間しか睡眠を取らなかったことで有名なアメリカの元大統領、ビル・クリントンは自身がこれまでに犯した失敗は睡眠不足による疲労や不注意が原因だったと振り返っており、少し極端かもしれませんが、もし彼が普段からあと2時間多く眠っていたならば、2008年に世界を震撼させたリーマンショックの引き金と言われているグラム・リーチ・ブライリー法にサインすることもなかったのかもしれません。

このグラム・リーチ・ブライリー法とは、世界恐慌の時代に禁止されていた投資銀行と一般的な銀行の業務を同時に兼ねても良いとする法律で、言い換えれば、人々が銀行に預けた預金を銀行が勝手にいろいろなものに投資しても良いことになったのです。

その一例が、返済能力の低い人たちに住宅を担保として高利で貸付を行うサブプライムローンで、これらの無茶苦茶な投資は最終的にリーマンショックという最悪な形で世界を襲うことになりましたが、仮に彼の選択に党内派閥や個人的な利害関係が絡んでいたとしても、あの日、十分な睡眠をとっていれば、より良い選択をすることができていたと考えることもできるのではないでしょうか。

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↑ビル・クリントンが普段から2時間多く寝ていたらリーマンショックは起きなかったのかもしれない

ベンジャミン・フランクリンの「時は金なり」という言葉を誰もが知っているように、そもそも、世界中で人々が睡眠時間を貨幣化して考えるようになったのは、エジソンの電球が遅くまで起きていることを可能にしたことがキッカケのようです。

日が暮れてから劇場やレストランに出かけることが一般的になると、電球の需要が伸びるため、より多くの電球を生産しようと工場に交替制を導入、そして24時間勤務という概念を生み出し、労働者を可能な限り開拓し利用するという19世紀の時代背景も影響したことで、睡眠の価値は大きく下がることとなりました。(5)

さらに、エジソンが自分は1日5時間眠れば十分に活動することができると自慢げに語り、「私に言わせれば、眠ってばかりいるのは、時間と活力とチャンスを無駄にすることだ」と述べたことで、睡眠の価値はさらに下落し続け、軽侮すらされるようになったと言われています。

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↑「時は金なり」は労働者を長時間働かせるために作られたセールストークのようなもの

「一日に4、5時間の睡眠で十分だ」と豪語していたエジソンでしたが、エジソンの伝記作家は彼が自宅の仕事部屋、図書室、そしてその他いくつもの部屋にベッドを用意して頻繁に横になって仮眠をとり、結局のところ“一日に4、5時間”どころか、随分と長く睡眠を取っていることを突き止めました。

このことを踏まえて歴史的な資料が眉唾物である可能性を考慮して、南オーストラリア大学の心理学者、ジェレミー・マーサーが睡眠時間が短い人たちの研究を行ったところ、平均3時間しか眠っていないという不眠症患者の実際の平均睡眠時間は7時間もあったと言います。

実験中、患者の脳波を計測して彼らがレム睡眠に入った時に起こし、いま眠っていたかと尋ねると、ぐっすり眠っていたはずの参加者の多くが「自分は目が冴えていた」と答えたそうで、言い換えると睡眠時間が短いと豪語している人たちの多くが“自分が起きていたという夢”を見ていたということが分かったのです。(6)

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↑私たちは睡眠時間を少なく見積もる傾向があるが、実際は自分たちが思っている以上に寝ている

2009年に行った研究によると、DEC2と呼ばれる突然変異遺伝子を持つ人は睡眠時間が短くても睡眠不足の兆候が全く現れず、一日の大半を起きて活動することができると言われています。しかし、これはあくまでも遺伝子の突然変異が原因のため、黒髪の人がどれだけ頑張っても金髪にはなれないように、大半の人は睡眠時間を削って元気に活動することはできません。

↑黒髪の人が金髪になれないように、普通の人はどう頑張ってもショートスリーパーにはなれない

人は生涯の約3分の1の時間を寝室で過ごすと言われていますが、人類の歴史を遡ってみると、狩りをしていた狩猟時代から農耕定住社会に移行するにつれて、人類は一か所に定住するようになり、それを機に家という概念が生まれました。そして、その家は初期のものはネグラ(寝るための空間)として使われており、そこから台所や居間、便所、風呂、そして客間などがどんどん加わったとされていて、振り返ってみれば住まいの原点は寝室だったのです。(7)(8)

このように住まいを手に入れることで人類は、動物や自然などの敵から身を守り、まとまった睡眠時間を確保することで、新しい技術を作り上げるなどの深い思考を司る前頭前野と呼ばれる脳の部分を発達させ、都市や文明を作り上げてきました。そのこと踏まえれば、睡眠がどれだけ私たちにとって重要なものなのかが容易に理解できます。(9)

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↑睡眠なしに都市や文明は発達してこなかっただろう

戦後の50年で急激に成長した日本は高度経済成長を経て円熟期に突入しているというのに、相変わらずエジソンの呪いから抜け出すことができずにガツガツと働いてきましたが、今の日本は睡眠時間を削って働かなければいけないほど困ってはいないのですから、短い昼寝をとる心の余裕があっても誰も文句は言わないのではないでしょうか。

スペインなど地中海沿岸部でシエスタと呼ばれている昼寝の習慣があることは有名ですが、実は東南アジアや南中国、そして中南米地域でも同じような習慣があり、これらの昼寝の習慣がある地域を地図に当てはめてみると熱帯から亜熱帯にかけて分布していることが分かっていて、日本もこれらの地域に含まれています。(10)

これらの熱帯地域に住む人々は共通して14時ごろに体温の変動が激しくなるそうで、生物学的に見ても体力を保存するためにこの時間帯に昼寝をすることは極めて自然で、理にかなった行動だと考えられており、このような観点から見れば、日本にもシエスタに相当する昼寝の習慣があっても良いのかもしれません。

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↑ランチを食べた後に少し長めの昼寝休憩をしても、困る人は誰もいない

一日に必要な睡眠時間はその人の体質、体調、そして周囲の環境によって多少前後してしまうため、一概に何時間寝る必要があると具体的な数字を算出することは難しいですが、戦前の日本にはもともと短い昼寝の習慣があったそうで、当時の人たちは短い昼寝休憩を利用して自分の体を上手に休めていたと言われているため、現代人も祖先の真似をしてみるのも悪くないのではないでしょうか。

現代人はiPhoneのバッテリーが少なくなると慌てて充電するのにも関わらず、自分自身の充電には無関心になりがちなため、私たちが本当に豊かになるためには、まず何を充電するべきなのかをよく考える必要があります。なぜなら、睡眠不足が美徳とされていた時代はとっくに終わりを告げ、“平和と幸福と健康”を手に入れるために「よく眠ること」が新しい時代のステータスになる時代が始まろうとしているのですから。

  1. 【参考書籍】
  2. (1)岩田アリチカ「なぜ一流の人はみな『眠り』にこだわるのか?」(すばる舎、2015)Kindle275
  3. (2)アリアナ・ハフィントン、本間徳子「スリープ・レボリューション」(日経BP社、2016)Kindle4436
  4. (3)アリアナ・ハフィントン、本間徳子「スリープ・レボリューション」(日経BP社、2016)Kindle1856
  5. (4)リチャード・ワイズマン、木村博江「よく眠るための科学が教える10の秘密」(文藝春秋、2015)Kindle840
  6. (5)リチャード・ワイズマン、木村博江「よく眠るための科学が教える10の秘密」(文藝春秋、2015)Kindle653
  7. (6)リチャード・ワイズマン、木村博江「よく眠るための科学が教える10の秘密」(文藝春秋、2015)Kindle1371
  8. (7)岩田アリチカ「なぜ一流の人はみな『眠り』にこだわるのか?」(すばる舎、2015)Kindle768
  9. (8)苫米地英人「脳は休ませると10倍速になる!」(宝島社、2014)Kindle325
  10. (9)苫米地英人「脳は休ませると10倍速になる!」(宝島社、2014)Kindle305
  11. (10)堀忠雄「快適睡眠のすすめ」(岩波書店、2000)P172

この記事の情報を用いて行う行動に関する判断・決定は、利用者ご自身の責任において行っていただくと共に、必要に応じてご自身で専門家等に相談されることを推奨いたします。弊社は、当記事の情報(個人の感想等を含む)と、この情報を用いて行う利用者の判断について、一切の責任を負うものではございません。

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