マンションリノベーションにおける『共有部と専有部』の注意点

[記事更新日]2017/04/23

そうだ、湘南の海側に家を買おう。専用庭のあるマンションでもいい。ビーチクルーザーを遊ばせ、庭の壁に外シャワーをつけよう。玄関脇にはサーフボードをタフに収納できる土間スペースが欲しい。リビングからフラットに広がるウッドデッキでの朝食は、休日の愉しみの一つだ。妻と子どもと3人+1匹暮らし。飼い犬の名はエリー。趣味のサーフィンのおかげで体力の衰えもまだ感じない。理想的だ。そして就寝前はこうつぶやく。「いいうねりが入ってくるようだ、明日は出勤前に1ラウンド楽しもう」

なんて妄想爆発な感じ、嫌いじゃないです。自分のライフスタイルに合わせたリノベーション!憧れますよね。せっかく買った家だし、自由に思うがままにアレンジしたい。でも注意も必要。リノベーションもできることと、できないことがあります。今回は特にマンションの専有部分、共有部分について考えていきたいと思います。

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サーフィン帰りは専用庭でシャワーを

湘南方面の住宅街を歩くと「外シャワー」がついている一戸建てが良く目につきます。これは、サーフィンから帰り、体についてしまった砂を家に入れないために、庭先でシャワーを浴びなくてはいけないという古くからの習わしがあるためです。

前述の妄想爆発もこれに倣い、マンションの専用庭の外壁に「外シャワー」つけました。でもこれダメなんですね。マンションの専用庭やバルコニーは共用部分といって、区分所有者(マンションのそれぞれの部屋の所有権を持っている人)全員で共有している部分です。部屋についている庭だからと言って勝手に外壁に穴をあける権利はありません。朝食が愉しみのウッドデッキも簡易的なもの(非常口としての機能を損なわないものなど管理規約等で定められたもの)を除いては、原則設置することができません。あくまでマンションのみんなの共有物なのです。

バルコニーはみんなのもの??

ただし、専用庭・バルコニー・ルーフバルコニーなどの、主にお部屋に隣接している共用部分は特定の居住者が専用で使用できる「専用使用権」が認められていることが多いです。ここは通常、専用使用者以外は勝手に出入りできませんので、お好みの椅子を置いてお茶したり、子どもプールで戯れたり(騒音、排水には注意が必要)、寝袋を用意して寝てみたりしてもOKです。もちろん清掃や日常の維持管理は原則行う必要がありますが、専用庭の改修工事、手すり等の鉄部の塗装、防水工事などの大規模な修繕工事は、管理組合(区分所有者みんなで組織する組合)の費用で実施します。

また、特にバルコニーは避難通路や階下への避難ハッチに利用されることが多いので、火事などいざというときに避難の妨げになるような物置、植木、大きな荷物などを置くことは禁止されています。ピンチなとき、バルコニーの隣地の壁は、突き破れるようになっていますが、お隣の荷物が邪魔してしまっては困りますよね。

マンションの玄関の扉を好きなブルーにしたい、は平気?

では、購入したマンションはどこまでは自由に、自分色にしていいのでしょうか?原則的にはマンションそれぞれの管理規約に基本的事項が定められていて、それに反しない範囲であれば自由に改修できます。

マンションには「専有部分」と「共用部分」という考え方があります。専有部分と共用部分の境界に関しては、法律上明確な規定がないようなのですが、国土交通省作成のマンション標準管理規約では、おおむね境界部分のうち躯体部分(主にマンションでいうところの部屋と部屋の間のコンクリート部分)は共用部分とされ、天井、床及び壁など、躯体以外の部分は全て専有部分の範囲とされています。

分かりづらいですね^^;。簡単な例としては、天井をむき出しにしたコンクリートに塗装をしてもいいのですが、穴をあけてはダメということです。また玄関扉も内側はブルーに塗り替えてもOKですが、外側はいじってはいけないのです。張り紙や看板も原則認められないことが多いでしょう。建物躯体にかかわる構造のところと、マンションの美観保全にかかわる外観のところは、マンション全体で管理する必要があるのです。

エアコンが設置できない!自分の部屋を作ったけど蒸し風呂に

以上のように、コンクリートでできた壁はほぼ、穴を開けられないと思ったほうがよいです。そこで注意すべきは「エアコン」。エアコンは室内機と室外機をつながなければなりませんが、そこを通すスリーブ(貫通孔)がない場合が、特に築年数の古いマンションに見受けられます。そのための孔をダイヤモンドカッター等で開けることをコア抜きと言ったりしますが、簡単にはいきません。もともと打設済みのコンクリートはコア抜き前提では作られてなく、誤って構造に必要な鉄筋を切ってしまいかねません。

以前「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」という新築マンションでは、施工中の数か所のコア抜きが発覚してしまい建て替えまで追い込まれてしまったこともありました。億ション(販売価格が1億円以上のマンション)であったこともあり、建物の安全性というよりは、不動産価値の回復は取り戻せないとの判断だったのではないかと思います。中古マンションの実情としては、レントゲン等の適切な検査と施工を申請することによって、管理組合の承認のもと許可を受けることができることもありますが、古い物件を購入検討の際は注意が必要です。男の夢の代名詞「自分の部屋(THE書斎)」を作ってみたは良いけど、冬は寒くて夏は暑い、季節感満点の夢の国になってしまわないよう気をつけたいものです。

人生を豊かにする、リノベーションを楽しむために

ところで筆者は、泳ぎが全くの苦手でサーフィンどころか海に近づくのも(本能的に)危険を感じてしまうのですが、湘南エリアに住んでいます。朝、私が出勤する途中の風景にも、父息子が自転車縦列でサーフボードを抱え、家路を急いでいるスローライフな日常があります。きっとあたたかいスープと優しい奥さまが、素敵なリノベ済みのお家で待っていることと思います。

そんな、家族や趣味を人生のまんなかにおいた「中古を買ってリノベーション」という選択は、生活の質を豊かにする住まい探し方のひとつです。そのためにも、正しい中古物件の選び方と、リノベーションで叶えることができること、できないことの基礎的な知識を学んでおくことは、家探しを楽しむコツかもしれません。


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