グーグルが行なう“量”から“質”の瞑想ランチ「ひと口ごとにナイフとフォークを置いて食事をすれば、たくさん食べなくてもよい。」

[記事更新日]2017/03/25

People having wine dinner overhead table top view

目次-contents-

昨日の夜、あなたは何を食べましたか?

日々、忙しくしていると、どうしても、ないがしろにしがちな食事。短い食事時間の中で、料理の『質』、よりもお腹いっぱい食べる『量』を優先してしまいませんか? 丁寧に食事を行うことで、ふだん食べている食事の量がいかに不適切か、そして、ふだんより幸福感を得られることに、気づけるいいます。今回は、そんな食事と幸福感の話です。

目の前の仕事に追われ、多忙を極める多くの現代人は、コンピュータの前でサンドウィッチを食べるなど食を疎かにしがちであり、その結果、アメリカだけでも約3,000万人が食べても食べても満足感や幸福感を得られない過食症や糖尿病を患うなど、食生活に大きな問題を抱えているという調査結果が報告されています。

元プロレスラーのアントニオ猪木さんも職業柄、一度の食事で10杯以上のご飯や焼肉2キロを平らげるのは当たり前だと語っていましたが、39歳の時に糖尿病を患ったのを機に、自らの食生活に真摯に向き合うようになったそうです。

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↑もう食べることに意味も価値も無くなっている

アントニオ猪木さんは空腹に襲われた際も暴食はしないよう心がけ、どうしても食べたい時にはキャベツを小さく刻み、大きく呼吸をしながら、ゆっくりと味わって食べた経験を振り返り、「ゆっくりと食べる習慣がついたことで、味覚が変わって、本当の美味しさを味わうことができ、心から食事が美味しいと感じるようになる」と語りました。(1)

このように、目の前の食べ物に全ての注意を向けてゆっくりと食事をとる事で、口に入れた食べ物の味や食感など、五感を使って感じ取り、今までないがしろにしてきた自分の食べ方や食べる量を見つめ直すことで、本当の食欲を取り戻し、食事から幸福感を得る「食べる瞑想」という仏教の教えをルーツに持つ取り組みが注目され始めています。

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↑食べ方や食べる量を見つめ直す「食べる瞑想」

ハーバード医学大学院によると、ゆっくりと食事をすることによって、脳内でレプチンと呼ばれるホルモンが分泌され、レプチンが他の脳内ホルモンと反応を起こすことで、「もうこれ以上食べるな」と脳に命令を出し、その命令を出した直後にドーパミンを発生させることで、人間は食後に強い幸福感を感じるそうです。

それは、赤ちゃんの本能的な食べる様子を見れば容易に説明がつきます。お腹がすいている赤ちゃんは離乳食をゆっくりと噛みながら食べますが、あるタイミングで赤ちゃんは口をぎゅっと閉じて食べることを拒否し、仮に母親が無理矢理口に離乳食を押し込んでも、赤ちゃんはそれを口から出してニコニコと笑いながら食べ物で遊び始めるという一連の行動は、脳の中で最終的に幸福感が得られるまでの反応をそのまま体現していると言えるでしょう。

"6 month old baby boy eating solid food, looking up and not wanting to swallow."

↑必要な分だけを取り入れる赤ちゃんの食欲は自然と止まる

ところが、レプチンが他のホルモンと結合してドーパミンを放出するまでには時間がかかるため、早く食べることで脳が満腹感を感じる前に必要以上の食べ物を身体に取り込んでしまい、必要以上の食べ物を取り込んでしまった脳は、上手くレプチンと他のホルモンを結合できなくなり、幸福感を得ることが難しくなってしまいます。

加えて、テレビを見たり仕事をしながら食事をすることで、意識が食事から逸れてしまうと、脳内で分泌されているドーパミンに鈍感になってしまい、幸福感を逃してしまうのだそうで、栄養学者であるパー・ブランガード氏はこのことを次のように比喩しました。(2)

「本を読んでいて、ふと気付くと、さっきのページに何が書かれていたのか全く思い出せないという経験を誰もが持っているのではないでしょうか。脳の中で起きていることも同様なのです。注意が逸れていると気付かないで通り過ぎてしまうのです。」

Glowing synapse in human neural system network. Full CGI showing active neuron cells.

↑できるだけ早く食事を済ませようとすることで、脳が大切なシグナルを受けそびれてしまう

食事の取り方で変わる幸福感

グーグルでは一ヶ月に一回、沈黙の中で全神経を食事に向け、1時間くらいかけて食事をとる「瞑想ランチ」と呼ばれるイベントを開催しています。

ハーバード公衆衛生大学院で教鞭をとるリリアン・チェン氏は、食べる瞑想が時代の最先端を駆け抜ける人々に注目され始めている理由は、人々があまりの忙しさゆえに「食べること」よりも、仕事や問題を消化することばかりに意識が行くようになってしまい、人間の基礎である「食」をないがしろにすることで、自分を失ってしまうのではないかと考え始めたためだとして次のように述べました
「この世の中は私たちの想像をはるかに超えるスピードで変化し続けています。そして、人々の生活のリズムは日を追うごとに早くなっていて、そのリズムに遅れをとらないように必死な私たちはどうしても食事に注意が向かなくなってしまいます。食べる瞑想はそんな日々の生活の中で本当の食欲や自分の体を見つめ直すキッカケになっているのかもしれません。」

Man in pasta bar

↑栄養や消化のスピードではなく、食べ物を口に入れて感じるプロセスにこそ、意味がある

栄養学者で「MINDFUL EATING AWARENESS」の著者であるパー・ブランガード氏は食べる瞑想を実践するにあたって、大きく呼吸をしてひと口食べるごとにナイフとフォークをテーブルに置くなど、一見異常だと思われるほどにゆっくりと体全体で食べ物を感じながら食べることで、食材の本当の味を知ることができると言います。(3)

実際に、アメリカの国立科学アカデミーが行った調査によると、ゆっくりと食事をとることで鼻から息を吸う量が増えるそうで、その空気が肺の入り口に空気の壁を作ることで風味が肺に逃げず、鼻により多くの揮発性物質を運ぶことができるようになるため、より鮮明に食材の味や風味を感じることができるようになるそうです。

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↑ひと口食べるごとにナイフとフォークを置くことで、より新鮮な風味を感じることができる

食べる瞑想の先駆者でベトナム出身の禅僧であるティク・ナット・ハン氏は、食べる瞑想を人々に広めるためにブルー・クリフ修道院を創設し、週に2回無料の食べる瞑想のイベントを開いていますが、800人収容できる施設を拡大しなくてはならなくなったほど参加希望者が押し寄せるそうで、それは今まで人々が食事の「量」で幸福感を得ていた時代から、食事の「とり方」で幸福感を得る時代へとシフトしつつあるからなのかもしれません。

実際に、アメリカで行われた1万2,000人を対象にした調査によると、瞑想状態でとる適切な食事から得られる幸福感は、セックスから得られる幸福感とほとんど同じであることをハーバード医学大学院などをはじめとする数々の研究機関が証明していることから、幸福度が「食べ方」によって大きく左右されることは間違いなさそうです。

man and woman legs lying in bed.

↑食事から得られる幸福感はセックスから得られる幸福感と同じ

この修道院で行われているマインドフルデイズと呼ばれるイベントに定期的に参加しているニューヨーク在住のカロリン・クロニンさんは、食事中に全ての感覚と一体となることで、自分の体が発している声を聞くことができるとして次のように言います

「ゆっくりと噛んで食材の味を確かめながら食べていると、次第に満腹感を感じ始めて、あまり多く食べられないことに気付くの。普段、私たちがどれだけ早食いしているかがよく分かるわ。それに、私たちは私たちが思うほどに多く食べる必要がないのよ。」

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↑意識して食べれば、それほど量を多く食べる必要はない

また、「MINDFUL EATING」など数多くの著書を出している作家のサイモン・リンドストロム氏は、ゆっくり食べて食材の味を丁寧に確かめるだけでなく、食事中や食後に満足感や安堵感など自分の気分を注意して観察することが大切だと述べ、そうすれば体が本当に必要としている食べ物の適切な量を把握することができると語りました。(4)

例えば、ミーティング中に空腹を感じて、ミーティングが終了したら何か食べようと思っていたのに、いざミーティングが終了したら空腹感がなくなっていたという経験は誰でもあるのではないでしょうか?

このような空腹感はストレスが引き金となっている偽の空腹感だそうで、食事をすることで幸福感を得ることができると理解している私たちの脳は食べ物を口に入れることによって、そのストレスをごまかそうとしますが、赤ちゃんが空腹の時に物凄い勢いで泣いて、母親に知らせるのを見れば分かるように、人間の本能である「本物の食欲」は数分ですら我慢することができません。
「食べる瞑想」のポイントは、適切な空腹感、つまり本当に体が食事を必要としていることを知らせる本物の食欲を見極めることであり、今、感じている空腹感が本物なのか偽物なのかを見分けるには、一度落ち着いて「その空腹は本物なのか?」と時間をかけて自分に問うことが大切なのです。(5)

Woman eating traditional Indian food in rooftop restaurant with Taj Mahal view in Agra, Uttar Pradesh, India

↑本当に体が食べ物を必要とするまで、食事をとることを控える

生活習慣は21日間の継続で上書きできる

潜在意識に関する著書を執筆している世界指折りの開業医であるマクスウェル・マルツ博士は、体に刻み込まれた既存の食習慣を手放し、新しい習慣を身に付けるには約21日間の時間が必要だとして次のように述べました

「形成外科医として働いていた私は主に鼻など患者の顔の手術を担当していましたが、患者が術後、自分の顔に違和感を感じなくなるまでにかかった期間は平均21日でした。それは、顔以外の手や足などの部位に関しても同じでした。生活習慣に関しても、21日間続ければ自分の中にある古い習慣を上書きできるのです。」

One young man sitting at a table in a restaurant eating nachos.

↑21日あれば、食習慣を変えることは十分できる

このように全ての人が21日間で古い習慣を完全に捨て切れるかどうかは別としても、何度も何度も五感を使って食事や自分自身を観察し、深いレベルで本物の食欲を理解することで、悪い習慣から解放し、本来の食欲を取り戻すことができるようになるのではないでしょうか。

「SNS上で◯◯を食べた」という投稿をして自分と他人を比べたがる人もいますが、本来の食事とは他人と自分を比較するツールではなく、自分の体に起きている一つ一つの感覚や思考を感じるための体のコンパスの役割を果たすものです。

「食」という漢字は「人」を「良」くすると書きますが、体のコンパスとも言える「食」を調整することで、今まで間違った方向に進んでいた食欲を本来進むべき方向に戻し、良く食べることで、良く生きることができるようになるのかもしれません。

  1. 参考文献
  2. 山田豊文「脳がよみがえる断食」(青春出版社、2016年)Kindle 215
  3. U.Damboeg, P.Braendgaard「Mindful Eating Awareness: Weight Loss With Wisdom」(Northern Light Press Copenhagen、2014年)Kindle 230
  4. U.Damboeg, P.Braendgaard「Mindful Eating Awareness: Weight Loss With Wisdom」(Northern Light Press Copenhagen、2014年)Kindle 903
  5. Simeon Lindstrom「MINDFUL EATING: A Healthy, Balanced and Compassioate Way To Stop Overeating, How TO Lose Weight and Get a Real Taste of Life by Eating Mindfully」(Amazon Seivices International, Inc)Kindle 308
  6. U.Damboeg, P.Braendgaard「Mindful Eating Awareness: Weight Loss With Wisdom」(Northern Light Press Copenhagen、2014年)Kindle 347

この記事の情報を用いて行う行動に関する判断・決定は、利用者ご自身の責任において行っていただくと共に、必要に応じてご自身で専門家等に相談されることを推奨いたします。弊社は、当記事の情報(個人の感想等を含む)と、この情報を用いて行う利用者の判断について、一切の責任を負うものではございません。

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