地味な暮らしで幸福度日本一になった福井県。「三世代同居こそが最高の贅沢品」

[記事更新日]2017/06/08

幸福度

日本総合研究所が発表している「全47都道府県幸福度ランキング」で福井県が2年連続で1位を獲得し、現在では幸福度の高さを県内外にPRするためのロゴも作られるなど、福井県は幸せな地域として知られています。

福井県と言えば、都道府県別の魅力度ランキングでは40位前後をマークしているように目立った観光地が永平寺や東尋坊くらいしかなく、メガネフレーム国内シェア96%を占める眼鏡産業や、カーシートなどの自動車内装材で世界シェア1位を誇る繊維企業など、国内のみならず世界でも活躍する企業が多くあるものの、どこか華やかさに欠けていることは否めません。

福井県

↑ただ平凡な景色が続く福井県が幸福度ランキングで1位を獲得

そんな目立たない福井県が幸福度ランキングで1位に輝いた理由には、サザエさん一家のようにおじいちゃん、おばあちゃん、その子供、そして孫が同じ家で暮らす「三世代同居率」の高さにあります。

現代では親と子供だけで暮らす核家族が増えているために三世代で一緒に暮らす家族はどんどん減少していますが、福井県は他県と比べると三世代同居率が圧倒的に高く、東京と比較しても約8倍も高い割合になっていて、三世代同居率の高さは福井県の特徴であり、幸せの要因にもなっているようです。

1948年、戦後復興間もなくして起きた福井地震以降、豪雨や豪雪などの自然災害に立て続けに見舞われた過去が家族や地域の人々とのきずなを強くさせ、このつながりの強さが三世代同居という形に表れているのかもしれません。

三世代

↑福井県では“サザエさん一家”のような三世代同居が当たり前

まず、核家族よりも三世代同居の方が親世代から子育ての支援を受けることができるため、より子育てがしやすいのは明らかでしょう。2016年には政府も少子化対策と子育て支援を目的として三世代同居を推進する施策を発表しており、実際、同居している夫婦の方が出生率が高くなっています。

三世代同居であれば女性は出産後も子供を両親に預けて外へ働きに出られるため、福井県では子供の育児を理由に働きたくても働けない人はほとんどいませんし、安心して仕事を続けられる環境が整っているからこそ福井県の共働き率が全国1位になっていることも納得できるはずです。(1)

学童保育

↑学童保育などに子供を預けるより、親に預ける方が安心できる

仕事と育児を両立させるために都会から福井へ戻ってくる夫婦もおり、Uターンで東京から福井へ夫と共に戻ってきた女性は、東京では子供を保育所に預けて仕事を続けようと計画するも保育所が見つからず、仕事と育児を両立させるという望みを叶えることができずにいました。

結局会社を辞めることになったちょうどその頃、福井で暮らす同級生から仕事と育児を両立させている話を聞き、うらやましくなった彼女は夫に相談して福井へUターンすることを決意したのです。

働きたい

↑東京で子供を持つ多くの女性が「働きたいのに働けない」悩みを抱えている

それから物事はスムースに進み、子供を親に預けるなど両親の手も借りながら地元の食品会社で正社員として働きだしたそうで、順風満帆な福井での生活を夫婦は次のように述べています。

「孫たちの面倒はわたしが見るから、早く仕事を探しなさい、と義母が言ってくれたんです。福井では女性も働きやすく夫婦共働きがあたり前なんですよね。」

「正直なところ、“幸福度日本一”といわれても、ピンとこないんですよ。ここでは、みんなあたり前の暮らしをしているだけですからね。ただ、東京での生活を思い返すと、福井に戻ったのは正解でした。だからこそ『福井は本当にいいところだ』と胸を張って言えるんです。」

育児中

↑育児中の女性でも正社員としてのびのび働ける普通の暮らしが幸せ

このように、三世代同居は働き盛りの夫婦にばかりメリットがあるように感じてしまいがちですが、実は、子供たちの成長にも大きく影響しています。

アタッチメント(愛着)とは、心理学用語で人と人との親密さを表現する行動のことで、これが不足してしまうと子供は心に問題を抱えるようになると言われていて、子供は社会的・精神的発達のためには父親や母親などのある特定の人と親密な関係を維持しなければなりません。

産まれたばかりの赤ちゃんは、特に産みの母親とのアタッチメントを強く求めるのですが、その後はどんどん絆を結ぶ相手を広げていくようになり、おじいちゃん、おばあちゃんや、近所の人たちなどアタッチメントできる人数が多い子供はより愛情豊かに育つことができるのです。

サウスアラバマ大学教授のローマ・ハンクス氏も子供は祖父母と触れ合うことで安心感を得ることができるため、特に、祖父母との関わり合いが重要であると指摘していて、三世代同居は子供たちに精神的な安定をも、もたらしていることがうかがえます。

安定剤

↑子供にとって、おじいちゃん・おばあちゃんとの触れ合いは心の安定剤

福井県教育委員会教育長の林雅則氏は、福井県の子供たちの学力の高さを指摘しながら三世代同居と子供の成長について次のように紹介しました。

「三世代同居、共働きが多いのが福井県の特徴ですが、(中略)おじいちゃん・おばあちゃんは子どもの養育については経験を持っていて、お父さん・お母さんが仕事をしていてもちゃんと見ていてくれるという、そういう環境で育ってきているから、子どもたちが、まじめにきちっと勉強するということがある。」

2007年以降、全国の小学6年生と中学3年生を対象に毎年行われる「全国学力テスト」で、福井県は毎回1位2位を争うトップクラスの成績を収めていますが、子供が家庭内でも落ち着いて学習できる環境が整っていることが学力の高さにつながっているのかもしれません。

学力

↑学力の高さの秘密も「三世代同居」にある

その他、三世代同居はシニア世代の心身の健康維持にも貢献しており、内閣府が実施した「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」によれば、60歳以上の人が生きがいを感じる時は、「孫など家族との団らん」が48.8パーセントと最も高いという結果になっています。

三世代同居で「孫など家族との団らん」がいつでも可能なわけですから高齢者が孤独を感じることもありませんし、“生きがい”が身近にあることが一番の健康の源になっているのでしょう。

健康

↑孫との何気ない日々の関わり合いで健康が維持される

福井県は兼業農家率が一番高く、高齢者はよく畑仕事をしていて引きこもることが少ないため、健康で要介護認定を受けている高齢者の割合も低くなっています。

特に、高齢者の元気生活率(要介護認定を受けていない高齢者の割合)は、65歳から74歳までの高齢者が96.6パーセントで全国2位、三世代同居という福井県の特徴が高齢者の心身の健康を維持していることは間違いなさそうです。

実際、生きがいを持つことで健康寿命を延ばすという研究結果もあり、アメリカや日本で13万人以上の被験者を対象に長期にわたって調査を行ったところ、「自分の人生には意味があり、自分は人の役に立っている」と強く思っている人ほど心臓病や心臓発作で死亡する確率が約20パーセント低くなることがニューヨークの心臓病学研究チームによって明らかにされました。

福井県

↑福井県には健康で長生きできる条件がそろっている

高齢者が元気であれば病院へ行く必要も少なくなり、みんなで一緒に住むことによって光熱費などの生活に関わる支出が減るため、当然ながら三世代同居は家計の面でのメリットもあるでしょう。しかしそれ以前に、冒頭でも述べたように、三世代同居によって子供がいる女性でも親に子供を預けながら正社員としてしっかり働くことができることが、何よりも家計を支える柱になっているようです。

また、福井県の女性は明治時代から繊維工場で働いてきた歴史的経緯があり、専業主婦でいると「なぜ働きに出ないの?」と周囲から不思議がられるほど、一家総出で働き。家計を支えるのが当然という勤勉な気風があると言います。

家族のメンバーそれぞれが仕事、育児や家事など協力し合うことで、自然と夫婦共働き率が高くなり世帯収入も安定、その結果、平均月収が高いとは言えない福井県の平均世帯収入が平均月収の高い東京を抑え1位になっているのです。

家族全員

今では珍しくなりつつある、おじいちゃん、おばあちゃん、その子供、そして孫が一緒に暮らす三世代同居は、家族のつながりを身近に感じることができる最高に贅沢な暮らしなのでしょう。

そして、この何でもない普通の暮らしこそが私たち人間が感じることのできる幸せの源なのかもしれず、エッセイストの吉沢久子さんは自身の著書「人生のぜいたく」の中で、人とのつながりの大切さを次のように記しています。(2)

「人間、ひとりでは生きられません。人とのつながりがあるから、ひとり暮らしでも、穏やかな気持ちで生きられるんですね。(中略)人間関係の貯蓄は何よりも貴重なものです。」

世代

↑世代を超えてつながっていく

共働き率や子供たちの学力の高さなど、多くの項目で全国1位を獲得している福井県の日々の暮らしは至って地味で普通の日常があるのみですが、内閣府「国民生活選好度調査」によれば、日本人が幸福と感じる上で重視するものは健康・家計・家族の3つと言われています。

きっと本物の幸せには派手さや華やかさなどは必要なく、家族みんなで一緒に暮らす“普通”の生活こそが重要なのでしょう。実際、福井県の人々は三世代同居によって日々の地味な暮らしの中で幸せの要素である健康・家計・家族の条件をすべて満たすことができているようです。

  1. 参考資料
  2. (1)藤吉雅春 「福井モデル 未来は地方から始まる」 (2015年、文藝春秋) Kindle 1627
  3. (2)吉沢久子 「人生のぜいたく」 (2017年、主婦の友社) Kindle101

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