億万長者の88%は持続的な読書家「でも金持ち父さん・貧乏父さんを読んでいる時点で一生庶民から抜け出せない。」
毎日の行動のうち、40%以上は「習慣」。
何かを習慣化することの難しさ。ダイエットや資格勉強しかり、みなさんも何かしらの経験があるのではないでしょうか?世の中で一流と言われる人たちは、習慣の力を知っているようです。今回は、そんな「習慣」の話です。
年収が高い人や社会の第一線で活躍している人たちの部屋には、必ずと言っていいほど本棚とトレーニング道具があると言われています。
アメリカで行われた調査によれば、金融資産が約3億3,000万円以上ある成功者と呼ばれる人の88%は、毎日30分は自分を向上させるための本を読んでいることが証明されており、またランニング専門雑誌「ランナーズ」が行った調査によると、皇居を走る男性ランナーの半数以上が年収700万円以上という結果が出ていて、一流クラスの仲間入りをするには、本棚とトレーニング道具が必需品のようです。
もし、このようなハイクラスの仲間入りがしたくて、読書とトレーニングを始めようと考えているのであれば、長期にわたる継続が必要になってきますから、これらを生活リズムの一部に取り入れるため、自分の意思をいかにコントロールするかがポイントになってきます。
↑3日、3ヶ月、そして3年、残念ながらほとんどの人は3ヶ月も続けられない
ダイエットや貯金、健康的な生活を送るなど「今年の目標」を定めても、70%以上の人が達成できず失敗に終わると 言われていて 、失敗に終わる理由はそれぞれですが、いずれにしてもリズムが出来上がってしまった生活に変化を与えることは難しく、たった1ヶ月で挫折してしまう人も多いようです。
アメリカのデューク大学の学者が発表した論文で、人の毎日の行動のうち、40%以上が「その場の決定」ではなく「習慣」であると結論付けられているように、毎日の何気ない習慣によって人生が大きく左右されてしまうのであれば、良い習慣を身に付けた方が人生の質が上がることは間違いありません。(1)
心理学の研究によると、人が起こす全ての行動には「動機」が存在していますが、どんな動機であれ、行動によって引き起こされた出来事が、個人であるその人にとって良い効果を生み出した場合、その行動を起こす頻度が高くなり、自然と習慣になっていくと言います。(2)
↑人々の毎日の行動の40%以上が、「その場の決定」ではなく習慣
ニューヨーク・タイムズの記者であるチャールズ・デュヒッグ氏は、かつて、毎日午後になるとカフェテリアへ行って、チョコチップクッキーを買うことが習慣になっていたそうですが、体重が増えてしまったことで、なんとかこの悪習慣を止めようと決意したそうです。
パソコンに「クッキーを買わない」と書いたポストイットを貼ったりなど、様々な工夫を始めてみたものの、しばらくはクッキーを買いに行く習慣を断ち切ることができませんでした。
↑どんな小さなことも「その場の決定」ではなく習慣にある[/caption]そこで、「カフェテリアへ行ってクッキーを買う」という一連の行動は、空腹、退屈、そして気分転換など、どの要因で起きているのかを解明するところから始めたデュヒッグ氏は、クッキーの代わりにドーナツやリンゴといった別の物を買ってみたり、カフェテリアへ行く代わりに外に散歩に出かけたりするなどして、あらゆる行動を試してみた結果、クッキーを買うという習慣は「クッキーが食べたい」のではなく「気分転換したいだけ」だったと理解します。
以降、気分転換のための行動は、カフェテリアへ行ってクッキーを買うという習慣から、友人のデスクに行って10分程雑談するという習慣に切り替えたことで、「今日もクッキーを買わなかった」という達成感から、以前よりも良い気分で仕事を終えることができるようになるなど、気分の面でも大きな変化が見られ、デュヒッグ氏はこの経験を振り返り、習慣がどのように働いているかを理解できれば、自分で思うように習慣をコントロールできるものなのだと述べています。(3)
↑人間の行動のほとんどは習慣だが、習慣は思ったよりも簡単な仕組みで機能している
「いま」とは、ちょっと違うことを、継続してやることの大切さ
通勤に電車を利用するという習慣は多くの会社員に当てはまり、人で溢れ返る車内に日々憂鬱さを感じてはいながらも、諦めて電車通勤している人がほとんどではないでしょうか。実は、満員電車で感じるストレスは、戦場にいる兵士が感じるほどに深刻なものだという研究結果もあり、電車通勤の負荷は私たちの想像をはるかに上回っています。
ヤフー代表取締役社長の宮坂学氏の場合は、ストレスを感じる満員電車で帰宅すると頭の中が仕事のことでいっぱいになったままスッキリせず、仕事モードを脱するためにも会社から自宅までの13キロの道のりを走って帰るようになった経緯を次のように述べています。
「電車で帰ると、仕事のテンションが途切れないため、帰宅しても仕事のことを考えて寝られないことがある。これが走って帰ると、走っているうちに考えることが面倒になり、帰宅後は心地よい疲労ですぐに寝られる。うまく切り替えられるので、おすすめですよ。」
↑毎日当たり前のように行っていることも実はほとんどが習慣
宮坂氏にとって、ジョギングは強制的に頭の中から仕事を引き離してくれる助けになるものとなっており、最近では週に3~4回、朝6時半ごろに起きて家の周りをゆっくり走り、今では走ることは「歯磨きのように、くせになっている」と話しています。
実際、走ることで脳が活性化されるということはさまざまな脳機能の実験で証明されており、さらに、ゆっくりジョギングすることで、判断力や決断力などをコントロールしている大脳の前方部分と前頭前野が鍛えられることも報告されていて、正しい判断を下すためにも、一度飽和状態になった頭の中をクリアにしてから考えることができるというジョギングは、脳を鍛える努力を積み重ねていることにもなるのです。(4)
↑ジョギングをハミガキをするような習慣にする
定期的に運動している人の方が、していない人よりも収入が9%高いという研究結果もあり、また、日常の中に決まった運動を取り入れ習慣化している人の割合も、年収400万円台が27.3%に対し、年収1,500万円以上の人では40.5%と、その差は一目瞭然で、脳の働きをサポートする運動の習慣は、仕事の成果をあげることに直結していると言えそうです。
実際に大企業の社長や、各分野の第一線で活躍している人たちの中には、運動などの良い習慣を身に付けている人が多く、例えば、45分の運動を週に6日行っているアメリカのオバマ大統領、毎朝1時間のランニングを欠かさないマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、そして毎朝テニスをしてから仕事に向かう雑誌ヴォーグ編集長のアナ・ウィンターなど、枚挙に暇がありません。
↑世界で最も忙しい人にランニングする時間があって、普通の人にその時間がないはずがない
一流の人たちの間で、運動以外にも共通して見られる習慣に読書があり、将棋の鬼才として知られる羽生善治氏も読書を習慣にしている一人ですが、10代の頃に、電車やバスでの約1時間の移動時間がもったいないと思ったことがきっかけで、読書をするようになったそうです。
一人の時間にできることは限られていますし、限られた選択肢の中で時間をより有効に活用してくれるのが、羽生氏にとっては「本を読む」ということだったそうで、手に取った本が将来どんな役に立つかは分からなくとも、興味を持ったらひとまず読んでみると話す羽生氏は、本を読むことの醍醐味を次のように述べています。(5)
「本を通じてたとえ他人から見たら意味のなさそうなことでも、自分なりに解釈してみることが、想像力や創造力を生み出す源泉になるのではないだろうか。」
↑時間など作ろうと思えば、いくらでも作れる
羽生氏が移動時間に本を読んでいたように、飛行機のファーストクラスではビジネス書や歴史、そして文学といった10冊ほどの本を機内に持ち込みながらも、ビジネス書ではなく、歴史や文学、考え方のヒントとなるような本を主に読んでいる姿が多く見受けられるそうです。
一流の人たちに共通することに、古典などすでに多くの賢人に保証されているような「良い本」を「大量に」読んでいることがあり、「本棚にもルールがある」の著者であり、元マイクロソフト日本法人の社長である成毛眞氏は、良著は人と違う人間になるための近道であり、逆に、何十万部と売れるベストセラーばかり読んでも、得られるものは他の何十万人の読者が得るものと変わらないため、つまらない人間になってしまうと言います。(6)
↑ベストセラーなんて読まなくていい
本を選ぶ際に、多くの人は本のタイトルを見て難しそうであったり興味がなければ、「これは自分には関係ない」と思ってしまうものなのかもしれませんが、そういった癖が成長への壁を作ってしまうため、成毛氏は難しいと思っても積極的に本を手に取る方が、手に取らない人よりも成長できる可能性が広がるのだとしています。(7)
実際に雑誌「週刊ダイヤモンド」(2013年5月18日号)で発表された読者のアンケートによると、年収500万の人は読みやすい本やビジネス本を選び、年収1,500万の人はより大局的な考えを学べるような難易度が高い本を選ぶという違いがありましたし、健康に効果のある運動がそうであるように、読書も脳に汗をかきながらするくらいのほうが、ためになるということなのかもしれません。
↑金持ち父さん・貧乏父さんを読んで満足していては、一生庶民から抜け出せない
1950年代から幸福についての研究に力を入れているギャラップ社によると、150か国に及ぶ大規模な調査で明らかになった幸福を左右する5つの要素は、「仕事・人間関係・経済状況・健康状態・地域社会」だったと言います。これらはいずれも、より良くしようと思っても短期間で手に入れることはできるものではありませんが、毎日の行いの積み重ねの結果、良くも悪くもできるものではないでしょうか。
つまり、運動にしても読書にしても、ただ気分が乗ったときにすればよいというわけではなく、「継続」する力、つまり習慣とすることが鍵になってきますが、始めるきっかけは、「5キロやせる」とかゴールの設定ではなく、今と違うことをやってみようというちょっとした思いつきで十分なのかもしれません。
↑長期間かけて手に入れたものは確実に人生に幸福を持たらす
南極マラソンや100マイル(160km)などの耐久レースを走りきるウルトラマラソンの選手であり、「ウルトラマラソンマン 46時間ノンストップで320kmを走り抜いた男の記録」を執筆したディーン・カーナゼス氏が走ることを始めたのは、なんとなく毎日をすごしているうちに30歳になってしまったことにショックを受け、「明日の朝をいつもと同じ朝にしない」と決めたことがきっかけだったそうです。
古代ギリシアの哲学者であるアリストテレスが、「繰り返し行っていることが、われわれ人間の本質である。ゆえに優秀さとはひとつの行為ではなく習慣によって決まる」と述べているように、社会の第一線で活躍している一流の人たちは、日々の読書とトレーニングの習慣によって作られていることは間違いないでしょう。(8)
↑本当の幸福感とは、続けながらやっとの思いで手に入れるもの
読書にしても運動にしても、日々取り組む中で自分の限界を取り払っていくうちに可能性は無限に広がっていくはずで、結局生活とは習慣化された、ごく小さな行動の集大成なのですから、生活の基盤となる部屋は行動を作る基盤でもあるのです。
本棚やトレーニング道具など、これから習慣化させていきたいことに関わるものを積極的に部屋に取り入れることで、行動に変化が表れやすくなりますし、習慣化されやすくもなるため、部屋のデザインはわたしたちの日常の行動と生活の質に大きく関わっていることは間違いありません。
- 【参考文献】
- 1.チャールズ・デュヒッグ 「習慣の力 The Power of Habit」 (2013年、講談社) P7, 8
- 2. 島井 哲志 「「やめられない」心理学 (2008年、集英社新書) P16
- 3.チャールズ・デュヒッグ 「習慣の力 The Power of Habit」 (2013年、講談社) P380、381
- 4.久保田 競、田中 宏暁 「仕事に効く、脳を鍛える、スロージョギング」 (2012年、角川SSC新書) Kindle 303
- 5.羽生 善治 「直感力」 (2013年、PHP研究所) Kindle 599
- 6.成毛 眞 「本棚にもルールがある」 (2014年、ダイタモンド社) P38
- 7.成毛 眞 「本棚にもルールがある」 (2014年、ダイタモンド社) P174
- 8. 上野 啓樹 「卓越した成果を出すための一流コンディショニング術 ハイパフォーマー思考」 (2015年、KKベストセラーズ) P202